「英単語careerのカタカナ表記キャリアは、経歴や職歴のこと。カリーアのほうが元の発音に近い。そこから転じて、豊富な経歴・職歴をもつ者や、国家公務員I種試験によって採用された国家公務員を指すようにもなっている。」(出典:ウィキペディア・フリー百科事典)
「キャリア」という言葉は、「仕事」「職業」の経験を指して使われることが多いようです。しかし、本来は「経歴」という意味もあるわけですから、いわゆる「会社の仕事」だけでなく、様々な社会経験もキャリアだと考えています。対価を得て仕事をしている人は、もちろん社会的なキャリアを積み重ねているのですが、対価を得る仕事をしている人だけがキャリアを積んでいるのではありません。職場を離れて子育てに専念している人も素晴らしい仕事に従事しているのです。ボランティア活動も、他に代えることのできない有意義な仕事です。私は、どれも素晴らしいキャリアだと思っています。
私は、共稼ぎをしていましたが、一人目の子を授かってソニーを辞め「専業主婦という仕事を選択」しました。会社では責任のある仕事を任せてくださっていましたから、当然そのまま仕事を続けるものだと思われたようです。しかし、会社にとっての社員は代わりがききますが、子どもにとっての母親の代わりはきかないと主張し、臨月まで交渉してようやく退職届を受理してもらいました。その後、夫の海外赴任についていくこともできました。これは、会社に勤めていればできなかったことだろうと思います。2人の小さな子どもを抱えての渡米でしたが、3人目をアメリカで授かり、3人の子育てをしました。子育てといいながら、本当に子ども達に育てられてきたと実感しています。
アメリカでは、子ども達が通っていた小学校のPTAから始まり、市教育委員会の外国人保護者の会会長、日本人保護者の会会長などを務め、全米組織の麻薬中毒撲滅委員会のカリフォルニア州支部理事としてもボランティア活動をしました。帰国後も、PTAや公立小学校英語活動の立ち上げ、ボランティア通訳の会会長など様々なボランティア活動を続けてきました。振り返ってみると、様々なキャリアを積み重ねてきたことになります。
女性の社会進出が進んだと言われています。それに呼応するかのように少子化問題が取り上げられるようになりました。それは女性が結婚を望まない、子どもを産みたくない、ということからきているのでしょうか。多くの女性は、それなりの年齢になると「仕事か、結婚か」その後は「仕事か、子育てか」を二者択一で選ばなくてはいけないと思い込んでいるのではないかと思います。そうしないと、自分の人生のキャリアが積み上げられない、あるいは子育てに専念する専業主婦になってしまうと「仕事ではないからキャリアの蓄積にならない」「社会から置いてきぼりになってしまう」という負の呪縛があるのでしょう。私は、決してそうではないと思います。仕事を続けながら保育園に子どもを預けて頑張る人も素晴らしいと思いますが、専業主婦になることを選択した人も、負い目を感じることはないと思います。納得のできる選択をすることが一番大事だと思います。
結婚して一生のパートナーを得るということは、とても人生を豊かにしてくれると思います。夫婦で納得ができるのであれば、「仕事か、結婚か」どちらか一つを選ぶのではなく、両方を手に入れようと思えばいいのです。私も、夫の理解がありましたから、独身の時代よりも自由に共稼ぎをしながら充実した仕事をすることができました。夫婦関係は二人で作り上げていくことができるものです。
子宝に恵まれた時には、子どもにとってのかけがえのない母親として、堂々と「専業主婦の仕事」をしてはどうでしょうか。こんなに素晴らしい時間を子どもと共有できるのだという幸せを実感してください。保育園にお願いすれば、プロの保育士さんがいてくれますが、自分の子どもとのこんな豊かな時間は他には経験できるものではありません。味わわないなんて「もったいない!」です。自分の信じる「人として大事なこと」を我が子に自分で伝えてください。それが子どもにとっての一番の教育であり、一生の財産になります。社会から置いてきぼりになどされません。親として、子どもを通して常に社会と関わっていくことができます。家庭から見ると、働きながら見ている社会とは随分違う面を見ることができます。子育ての仲間とのネットワークで得ることが、数え切れないほどあります。そんな経験も、全て素晴らしいキャリアなのです。
結婚し、子育てをしながら人生を歩いてきたことで、私はキャリア・アップしてきたと思います。専業主婦であっても家の中に閉じこもってしまうのではなく、いつも社会に向けてのアンテナを張っていてよかったと思います。不思議なことに、その時に私を助けてくれる多くの出逢いに恵まれてきました。専業主婦の時代を経て、また全面的に仕事をするようになったのも、ボランティア活動でできたネットワークがきっかけでした。
これまでの様々なキャリアの経験を活かし、いろいろな角度から物事を見ながら、市民の皆様のために奉仕することが私にできる社会貢献であると確信しています。