国際化が顕著な現代社会で生きる真の「国際人」を育てるためには、何が必要なのでしょうか。
私たち家族がアメリカに駐在することになった時、子ども達は日本語習得もまだ十分にできていない年齢でした。数年の駐在を終えれば日本に戻ってくることがわかっていましたから、「日本人」として子ども達を育てるためにどうしたらいいのか、よく夫婦で話し合いました。国際化社会において第二言語習得は重要ですが、日本人としてのアイデンティティを確立するための母語・母国文化教育は欠かせません。学校では、英語漬けの生活をしてきますから、家の中では英語の使用を禁止し、日本の季節の行事は、できる限り、家で取り入れるようにしました。手に入る食材で、毎年おせち料理を工夫して作りました。そうした家庭内の努力を続けたことで、子ども達は、日本に誇りを持った日本人として育ち、自分の言葉で、自分の考えを表現できるように育ったのではないかと思います。
小学校英語必修化が決まり、現場で学級担任の果たす役割がさらに大きくなることが予想されます。英語に対する抵抗感がある教員の意識改革、英語指導技術教育が必要不可欠になると思います。専科教員を養成し小学校へ配属するのも一つの方法ですが、現場の混乱を避けるためには、学級担任が自信を持って教壇に立てる取り組みを考えていかなくてはなりません。
1998年から川崎市立東小倉小学校において、コミュニケーション能力の育成をめざして実践した小学校英語活動は大変好評でした。子ども達は、英語を覚えるというよりも、英語活動を楽しんでいる間に、コミュニケーション能力が高まり、人との関わり方が積極的になったという現場からの報告が多くありました。これは、英語活動の時間に経験したコミュニケーション能力が、他の場面でも積極的な姿勢になって現れた、というものであり、小学校で英語活動に取り組むメリットといえます。英語活動が「英語教育」になっては、本来、英語活動がめざしているはずのコミュニケーション能力の育成とは離れてしまい、中学校での英語教育を前倒しするだけで、母国語である日本語も、第二言語である英語も正しく習得することのできない状況になる危惧があります。多くを吸収できる、柔軟な小学生ならではの取り組みが大切です。
真の「国際人」を育てていくには、自らのアイデンティティを確立した上で、相手を理解し、違いを認め、相互理解を深めることのできる力、すなわちコミュニケーション能力を育むことは重要です。その意味において、小学校に英語活動を取り入れることは、有意義なものであると考えます。しかし、母語の言語習得初期である小学校時代に第二言語を学習することの意義については、多面にわたる検討が必要だと思います。
地域社会のサポートを得て地域の公立小学校での英語活動を実践してきた経験を、神戸市でも反映できないか、コミュニケーション能力育成をめざす小学校英語活動はどうあるべきか、神戸市ではどう取り組んでいくのか、私自身の経験を神戸市の小学校英語活動に活かしていきたいと考えています。